7月15日 生きていく道がみえてきた

・・・・『なんだか生きていく道が見えてきた映画鑑賞』・・・・
7月15日、土曜日、晴れ

今日は『日本沈没』の映画が初日なんだ。
この旅に出てからというもの、映画を観ることが一番の楽しみになっている。
9時から開場となるから、少し早めに行ってみて、驚いた。
扉の前には、すでに行列が出来てるんだもの!なんとも凄い人気だと思っていたら、なんとこの行列はポケモンを観る子供たちの行列だった。
世の中は3連休だったらしく、休日を子供と過ごす寝グセ交じりのお父さんであふれていた。(今の俺にはもう連休や、休日さえ判らなくなっていた)
よく見てみれば、日本沈没の観覧者は6人ほどの行列で、初日だというのに1番いい席で映画を見ることができた。(やっぱり広い座席は落ち着くなあ!)
高校生の時に観に行った映画館は、どうにも居心地が悪くって、1時間半が辛抱しきれなかったもんね!(それに比べたら、今日の椅子は広くて最高だ!)
映画の役者さんは、熟年した記憶に残るメンバーが出演していた。
小泉首相の髪型を意識しているのか?首相役の石坂浩二さんは2つの心を持つ悩ましい役所を見事に表現していた。(何といっても豊川悦司さんの獣のような視線に引き付けられていった)
20代初めの『俺は』あんな獣のような目をしていたのかなあ〜
自分の人生の中に、『限界』というものが見えずに、その限りなき欲望に向かって突き進むしか知らなかった・・・・。
周りが『無理だ!』という事に対しては特に牙を向いて、『俺にやらしてくれ!』と向かっていく・・・って、どうしてそんな気持ちになってたんだろうか?
『出来ないものなど何もない!』っという自信はいったい何処からくるのか分からなかったけど、みんなが出来るものには興味をしめさない、変な奴・・・・。
いつも飢えた獣のように・・・・なにに腹を空かして過ごしていたんだろう?
余りにも大きなものを追い求めたのかなあ?自分の身体の事を、ムチャクチャにもてあそんでいたツケは、『急性肝炎』という大きなしっぺ返しになって俺をベッドの上にしがみつけたんだ。
・・・だけどねえ、そんな事で腹を空かした獣は意気消沈するほどヒマを持て余していなかったんだ。
1ヶ月半の間、何もせず天井だけ見つめて、何にも治療も始めることが出来ないくらい体はボロボロだったんだけどね、『なんなんだ、いったい!さっさと治療をして早くここから出しやがれ〜!』って病院に対して怒りをぶつける有様だった・・・。
担当のドクターから、『あなたの肝臓は弱っていて、今のままでは治療に耐えきれるものではないんですよ。肝臓のGOTの数値が2300から、500の数値に落ちるまで、寝返りしない覚悟で過ごしてください。いいですね!』と言われて、事態が一刻を争う事に初めて気が付いたんだ。
それでも病気に負ける気がしなくって、どんな治療にも耐えれる自身がみなぎってたんだ。
入院をして2ヶ月を過ぎる頃から、病室の人が次々と集中治療室に運ばれていき、2〜3日後には死んでいくのを・・・
そんな事態を目の当たりにする頃から俺の気持ちは変わっていき、社会に復帰する心は消えていった。
その消える前の、ギラギラした獣の目を、40を過ぎるこの豊川悦司は持っていた。
人は最悪の事態から逃げようとするもんだ!だけど、その最悪の事態に立ち向かう者の美しさ!が俺の目には浮き彫りになって見えていた。
『受け入れる』という心の尊さ!イサギヨサは、『何の為に産まれてきたのか?』という事を知った者にしか表れないものなんだろうか?たとえそれが、命を懸けたものであったとしても!
多くの人に分かってもらえない事なんて、どうでもいい事なんだ!
自分のやるべき事に向き合う事が大事なんだ・・・と思い出させてくれた!
草なぎくんが、テントの中で柴崎こうと触れ合う時の感情は、自分のやるべきことを行う決心をした男の行動が憎らしく、清らかに見える。
死に逝く人間の心使いと、強い愛情が、唇を合わせるだけのアメリカ映画より、美しく心に刻まれていった気がした。
『俺はこの10年の間に何をしていたんだろう?獣の目は何処へ置き去りにしてしまったんだろう?安定?権力?組織力?そんなものにドップリと浸かっていた間に、すっかり削ぎ落とされていったのだろうか?』なんだかとっても悔しい!
・・・・あの頃の俺は輝いていた!
大人から見るとガサツなだけの男にしか見えないかもしれないけれど、どんな難題でも立ち向かう勇気を持っていた。
この身が果てようとも、やり切る目標を持っていた。
権力なんてクソ食らえ!と、いつも言っていた。
俺はあの頃に戻りたい!優しくなるのは愛する人の前の一時でいい!
まだまだ俺は、終わってはいないんだ!
この旅で観て来た映画の影響からか、旅で何かをつかみ掛けているのか?そんな気持ちになった1日だった。
そんな状況の中、この映画のエンドスクリーンをぼ〜!っと眺めてたんだ。
映画を作るのにはこんなに沢山の人が関わってるんだなあ?しかもこんなに小さな事なんて、書かなくってもイイジャンって事まで書いてある!
俺がやっていた建築って仕事もとんでもないくらいの人数が、持てるだけの技術を集めて家を造っていくんだ。この映画にもひけを取らないよ!って思って観ていた時に?????っと閃いた!
何で俺たちはこのエンディングみたいにカッコ良く仕事に携わった『人の名』を書かないんだろう?あんなに暑かった日に、大喧嘩をしたり、難題に頭をひねりながら完成していった芸術家の職人の名前を映画のエンディングのように書き示してもいいんじゃあないか!って思ったんだ!
主役だけがもてはやされて映画が出来ないのと同じように、人夫のおばちゃんの名前があってもいいんじゃあないか?その人がいないと家なんてできないんだから!
そして最後の欄に、この現場の総指揮者の現場監督の名前がドーンと載るんだ!
それが一枚のパネルとして、『定礎石』のように作っていいんじゃあないかな!
そう閃いたんだ!おもしろくない?
今日はいつもの定食屋で御飯を食べて、2日前に泊まった道の駅『マオイの丘公園』で就寝しよう!
だけど今日は眠れるだろうか?今までとは違った感覚が身体の中を駆け巡り始めた気がする。
自分の扉のカギ穴に今まで散々カギを突っ込んできたのに、全く開こうとしなかった扉に今日、ピッタリと合ったカギを突き刺したみたいだ!
後は回すだけだ!すぐそこまで時期は迫って来ている!
おやすみ!